のんびりだらだらと書き綴っているこのシリースの第4回目。
Dの作曲家といえばマイナーどころでは
デザンクロのオリジナル作品「アリアとロンド」
かくれた佳品らしいです。野田一郎氏が録音している。
ゲーリーカーファンならご存知の
ダウニーの協奏曲。
ディミトリスクのタランテラ風舞曲。
(ゴイラフ氏が収録しているほか、最近 この曲が収録されたCDが出ました。
未聴だし買う気もないけど)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2747451
と、まぁマイナー作品はあるのだが
どう考えても超大御所はディッタースドルフとドラゴネッティだろう。
ディッタースドルフはあのどう聞いても間抜けな冒頭を持つ協奏曲が有名であるし、
ドラゴネッティはベートーヴェンとのからみで
あるいみコントラバス奏者の中でもっとも有名かもしれない。
ディッタースドルフは
2曲の協奏曲とヴィオラとのシンフォニアコンチェルタンテが有名。
ほかにも隠れた作品としてヴィオラとのデュエット 変ホ長調があるが
録音は1種類しか知らない。
協奏曲第1番(?)は録音が少なく
悪名高いワノク盤と
よく言えば穏やかな音で悪く言えば眠くなるポシュタ盤が有名。
http://www.hmv.co.jp/Product/detail.asp?sku=293808
協奏曲第2番は比較的録音が多い。
オーケストラのオーディションで用いられる曲らしい。
他の楽器はモーツァルトやハイドンの協奏曲で
オーディションするらしいがコントラバスにはないのだから仕方がないではないか。
(ハイドンにはあったらしいが時代の流れで消滅したらしい)
ハイドンやモーツァルトと名を連ねる光栄を拝した作曲家である。
録音が多いが、最も聴き所でであるカデンツァが
グルーバー版である録音は少ない。
私の持つ6種の演奏のうちグルーバーのカデンツァを弾いてるのは
シュトライヒャーによる2種のみである。
(しかもレコード、なんでこの聖書的名演がCDにならないのだろう?
カーのクーセヴィツキーと並んで
コントラバスの商業的には大当たりするCDになると思うが)
同じグルーバー作のカデンツァでも
ヴァンハル協奏曲のためのものは
ほぼ100%普及している。
なぜだろう?
オーケストラの課題になるこの有名すぎるカデンツァを
恐ろしくて録音できないのだと邪推するほかあるまい。
まぁ、たぶん、作品の中でカデンツァだけ浮いちゃうからなんだと思うけどね
事実、パトリック・ズュースキュントの「コントラバス」にも
このことを示唆させる記述がある。
まぁ、ディッタースドルフはおいておいて
ドラゴネッティ。
こいつはすごい。
コントラバスの歴史を変えたという意味ではボッテシーニなんか目じゃない。
一般的にはベートーヴェンの前でベートーヴェンの
チェロソナタ2番を弾いたとされ、
彼のせいで運命や第9のコントラバスは難しくなったらしい。
まぁ、おそらく多分そうなんだろうが
あえて反発してみる。
ドラゴネッティ以前(?)の
モーツァルト40とかも鬼のように難しいではないですか!
モーツァルトやベートーヴェンは各楽器の性能なんか考えちゃいないんだと思う。
彼らは音が欲しきゃ、楽譜に書くだけで
べつにドラゴネッティがいなくても
第9は難しかったのではないかと思うのだが?
まぁ、それはさておき
ドラゴネッティに関するおもしろいエピソード。
ある日、ドラゴネッティが深夜のホテルで真夜中演奏したらしい。
すると翌朝、他の客が「昨日、雷があったね」と話していたらしい。
ドラゴネッティの轟音は雷に聞こえたというエピソード。
ばからしい、こういうエピソードがあるから
田園ができちゃうわけで。
ドラゴネッティは天涯孤独で
家族がいなく、犬が友達だったらしい。
そして、家族の変わりにマネキン人形を持ち歩いていたとか。
異常である。
車のない当時
コントラバス抱えて犬を従えて
マネキンを持って歩いたんだろうか?ちょっとともだちにはなれないね。
たくさんの作曲家を啓発し、名曲であるロッシーニのデュエットは
ドラゴネッティと競演したかったパトロンがロッシーニに依頼して誕生した曲である。
同時代のイタリア系の協奏曲にも
ドラゴネッティが絡んでるに違いない。
ドラゴネッティ。エピソードは多いが作品は案外世に伝わっていない。
たとえば最も演奏される協奏曲 イ長調は偽者で
本当はナニーの作品らしい。
本当のドラゴネッティの作品は恐ろしく地味である。
タイトルもアンダンテとロンドとか味気もない。
そして面白くない曲が多いが
とっておきを紹介。
チェロとコントラバスのためのデュエット
2楽章の短い曲だが美しい。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/966291
(このCD以外にゲリーカーも録音している。)
独奏コントラバスのための12のワルツ
一般的には無伴奏曲といわれているが
本当は伴奏があるんじゃないかなぁと思わなくもない。
ドラゴネッティは作曲家としての才能はなく
ピアノパートはかけなかったらしい。
だから、この作品もコントラバスパートだけ伝わっており
無伴奏だと思われているのではないかと思うのだが。
実際引いてみると無伴奏ぽくないのである。
だが低い音域を効果的に使った佳品であるが
ひたすら無伴奏コントラバスが
ワルツのみを12曲も弾くというのはねぇ。
パガニーニのほうが時代が後だと思うが
パガニーニの24のカプリースみたいなのにしたかったのかなぁ・・・?
簡単に概要
1番 ナニーはこの曲を見て自作の協奏曲の2楽章のカデンツァをつくったのだろう。
2番 ハ長調のすばやいスケールを用いた作品
3番 愛らしいフレーズでトリオのスラーの使い方は効果的
4番 ♭が多く弾きづらいが練習になる。
5番 変ホ長調を効果的に使った美しいフレーズと休符の使い方がおしゃれ
トリオのハ短調は怪しげ
6番 無窮動的な主部と重音を用いたトリオの対象が美しい
7番 一番よくできてるのでは?全体的に弾きやすい。美しいトリオを持つ。
8番 せわしない感じ。トリオのスラーが難しい。
9番 一見すると前衛的な?半音階がトリオにある。
10番 本当に低い音域を効果的に使った愛らしい小品
11番 11,12はけっこう難しいが弾きづらくはない。
12番 フィナーレらしく迫力満点に動き回る。
1つ1つは2、3分の曲だが
すべての曲を繰り返しも入れて演奏したら・・・・
コントラバス至上最高の長大な作品になるのではないか。
永島義男氏が数年前これをやったらしい。
すごい偉業である。
無伴奏だから当たり前だが無音になってしまうわけだし
12曲弾くという体力も大変である。
すごい偉業だ。
しかし、客の反応はどうだったのだろうかとも思う。
さすがに12曲は長いと見えて、いろんなCDに
ちょこちょこ録音されている。
上記に紹介したドラゴネッティのCDにも3つだけ収録されている。
このワルツは楽譜が怪しいらしく
いろんな版がある。わたしも興味を持って2種類持っているが
アーティキュレーションはともかくとして、
リズムやら音にさえ違いがある。
個人的は以下のCDに収録されている前半6つが
演奏、録音の質ともに優秀なのでぜひ聴いてみて欲しい。
他の収録曲もおもしろい。これは近年買ったCDの中で
かなり当たったCDである。オススメ。
12すべてを収めたCDも最近出て、
なんとi−tuneでもダウンロードできるのだが
視聴した限りでは恐ろしくへたくそで
意味もなく1オクターブ上げて演奏しているのが気に入らないので
今は買っていない。
http://cdbaby.com/cd/patrickneher3
とにかくこんな12のワルツであるが
なかなかよい作品もあるし、そこまで難しくもないのでおススメ。
いや、難しいな。
音域は低いが低音をきれいに弾いたり曲らしくするのは
かなり至難の業。
おススメは3番、6番、7番、10番
楽譜も1500円程度でお買い得だし
よく大きな楽譜屋では見つける。
しかし、なぜ、ベーシストは無伴奏チェロ組曲ばかり弾いて
この愛すべきオリジナルを相手にしないのかは理解できない。