今回取り上げるのは「Arctic DoubleBass」というCD。
英語は苦手なのだがArcticは「極北」などと訳すらしい。
たしかにジャケットの写真は
雪の地方でコントラバスが木によりかかっているものである。
ソフトケースにすら入っていない。
どうせリースした合板の安い楽器だろうが
昔、合板を愛用した私としては楽器が可哀想である。
(といってもその合板の楽器は私の不注意で大破したのだが・・・)
もし、写真に使っている楽器がオールドの銘器ならある意味狂っているが・・・
さて、このCDは様々な奏者が様々な曲を録音しているのだが
目玉はなんといってもトゥビンのコントラバス協奏曲のピアノ伴奏版だろう。
トゥビンはエストニアの作曲家である。
エストニアが地政学上、北欧にはいるかどうかはわからないのだが
トゥビンはエストニアがソ連に併合される際に
スウェーデンに亡命し、長い期間スウェーデンにいたので
北欧の作曲家であるといえる。
トゥビンのコントラバス協奏曲はBISレーベルで録音された物を以前紹介したが、
こんな曲に2種類の録音があるとはうれしい。
また、BISのものは管弦楽伴奏版だったが
ピアノ伴奏の録音があるとはねぇ・・・世の中探せばある物だ。
このCDでは3つのトラックに分かれている。(BIS版では1トラック。)
楽譜を見たことないのでないので何とも言えないが
区切り方を見るとテンポ便宜的にで区切っているだけで
厳密な楽章の分かれ目はないと思うのだがどうなのだろう。
さて、冒頭の不穏なリズム。ここがこの協奏曲の魅力の一つである。
ピアノによるリズムも管弦楽とは趣の違う切迫感がある。
そして、ソロ登場!うまいじゃん!
音色は透き通っているし、技術的にも安定している。
しかし、ピアノはよく頑張っている。あの管弦楽の多数のパートをよく弾いてる物だ。
曲はしばらくすると神秘的になるのだが
静かな部分では
ピアノ伴奏の方がコントラバスの旋律がハッキリと聞き取れてわかりやすく聞きやすい。
独奏パートがこんな事をやっているのかという新たな発見がある。
ただ、大管弦楽が炸裂するところではピアノ伴奏だとやはり物足りない。
まぁ、致し方ないのだが。
カデンツァを経て圧倒的なテンションで繰り広げられる舞曲的な部分では
ピアノ伴奏ではやはり忙しいようでピアノの旋律が安定しない。
ニーノロータのコンチェルタンテもピアノ伴奏版だと
ピアノが異常に忙しくなるので
大管弦楽のピアノ伴奏版というのはやはり無理はあるのかもしれない。
まぁ、BIS版が明らかに本命だが全体的にコントラバスは上手いので、
BIS版とお互いに足りないところを補う補完的な意味で
重要なCDといえる。BIS版が気に入った方にはオススメ。
お次は違う奏者でチェルニーの「夜想曲と間奏曲」。
チェルニーはコントラバス奏者でよくCDの中で作品を見かけるが
どこの作曲家はよく分からない。
このCDは様々な奏者が録音しているが
この奏者は今ひとつか。(特に間奏曲から)
曲はなかなかとてもいいのだが飽きてしまう。
この曲ををゲーリーカーが録音したらとんでもないことになりそう。
逆に河原氏あたりだと名演になりそう。
次のkuchyunka(読めない)のコントラバスの二重奏曲は
非常にシンプルな旋律が美しい。
シンプルイズベストとは正にこのことである。
逆にコントラバスのCDでよく見られる作曲家
ハウタ=アホの二重奏曲も収録されているがこちらは奇抜さをねらいすぎた感がある。
さて、ヒンデミットのソナタも収録されているが、これはいい。
特に3楽章の歌い方が素晴らしい。ピアノとの音量のバランスもばっちり。
コントラバスの音色は透き通った物で素晴らしいが
欲を言えばもっと荒々しい部分があってもいいと思うが
数ある、ヒンデミットのソナタの中でも上位に入る出来だと思う。
全体的に高水準なCD。どの曲も聴き応えがあるのは
奏者が違うせいかもしれない。