このシリーズは今回で最終回。
さて、ロンドンダブルベースサウンドとはロンドン交響楽団の
コントラバス奏者8人(だったかな)によるCD。
その中の3曲ではゲーリーカーがソリストとして招かれている。
(コントラバスアンサンブルにソリストが加わるというのはおもしろい企画だ。)
一部ではオルケストラドコントラバスの模倣とされているが
このCDを出しているCALAでは
ロンドンチェロサウンドだとか他の楽器だけのCDも出ているので
模倣ではないのだろう。
好意的な意見ではオルケストラドコントラバスはジャズで
このCDはクラシックだとされているがはっきり言ってこのCDの一般的な評価は悪い。
HMVで購入可能?
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=442453
(HMV通販では入手困難となっていて
3ヶ月ほど待っても入荷しなかったのでいらいらしていたら
新宿のタワーレコードに二枚売っていたし、
銀座のヤマハでも発見したのでキャンセルして購入した。
HMVではともかく手に入れるのはそんなに難しいとは思えない。)
さて、この曲の目玉はゲーリーカーがソリストを務めている
ゲーンズのスケルツォ、パガニーニのモーゼ幻想曲、
ブロッホの祈りだろう。
しかし、私が一番好感を持った曲は
マーラーの交響曲第1番の第3楽章をコントラバスだけで演奏している
Frere Jacques Fantasyである。
マーラーの「巨人」といえばコントラバス奏者にとって思い出されるのは、
あのソロである。その楽章をコントラバスだけで演奏するというのは
いい企画じゃないか!
冒頭のティンパニーのレ、ラ、レ、ラ・・・が
ハープになっているのが不満ではあるが、
(コントラバスのピツィカートではなにか問題があるだろうか?)
この曲の葬列の様子がコントラバスの重低音によって
いい感じで再現されている。
この曲は岩城宏之氏の本で読んだところによると
ユダヤ人の葬列なのだが葬列といえどユダヤ人の集会は禁じられているため
途中で酔っぱらいのふりをして無理して騒いで見つからないようにごまかしていると
書いてあったが、そういった感じが
コントラバスだといい感じで再現されている気がする。
ゲーリーカーがソリストを務めている曲を聴くと
コントラバス重奏の中でもカーの音色は
移植に素晴らしいことが確認できる。
モーゼ幻想曲はソリストばかりが目立つ曲のため
普通の録音比べていてもあまり違和感がない。
祈りとスケルツォはオーケストラ(?)伴奏の録音は
これしかない思われるので貴重である。
祈りではカーのすさまじいテンションが感じられ
スケルツォではオーケストラを含めすさまじい迫力がある。
このように書くといいCDのように思われるが
つまらない曲も多いのも事実。
たとえばカルメン幻想曲(プロトゥやサンキーのものではない。)は
間奏曲やアルカラの竜騎兵なんかも聴きたかったのだが
いまいちおもしろくない編曲になっている。
さらに軽音楽系(?)はおもしろくない。
やはりこういったジャンルは本家(オルケストラドコントラバス)の方が
圧倒的によい。
安易にエレキベースやドラムセットを使ってしまうところが
パーカッシヴなコントラバスを操るオルケストラドコントラバスに
はじめから負けてしまっている。(まぁ、勝負してないのだろうが。)
やはり全体的には評価が悪いことが頷けるCDではあるが
マーラーはおもしろかったし、ゲーリーカーファンにはおもしろいだろう。
カーを囲んでいるジャケットの構図を見るとやはり
カーの偉大さを感じる。
ちなみにCALAのホームページでは
この収録曲の譜面が買えるようだ。マーラーなんかやったら楽しそうだが
コントラバス重奏って素人がやると本当に汚い演奏になる。
音程やテクニックが完璧なプロフェッショナルだけができる
崇高なジャンルなのだろう。(評価はされないが。)
CALAのホームページ
http://www.calarecords.com/
以下余談
マーラーの巨人のソロってどうやって弾くのだろうか?
DEFEDーDEFEDーFGAーFGAー
AーBAGFED、AーBAGFEDの部分はともかく
さいごのAでオクターブ下がるところは
同一ポジションでA線なのかD線のAまでポジション移動するか気になる。
後者の方が音色的には素晴らしいし王道なのだろうが
次のオクターブ上のAの跳躍に危険を感じる。
(まぁ、もっともそんなことができない人は
オーケストラで首席はできないのだろうが。
このソロを弾きこなせる人ってすごいと思う。)
楽譜を文字にするって難しなぁ。